コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
「ほっとけ」
「いやいや、放っておけないでしょ~。最近の航、神気迫るものがあるぜ、ラリーでも。ちょっと怖いくらいだ。いいから何があったか話してみろよ」
・・・・お前にだけは、嫌だ。
俺はタオルを頭の上からかけてやつの声を無視する。気になる女子が出来てしまったなどとこいつに言った日にゃ、きっと佐伯も巻き込んでの面倒臭くて恥かしい展開へと連れて行かれるはずだ。
こいつは巨体ながら、恋愛は俺より遥かに多い経験を持っている(本人の言うことを信じれば、だけど)。幼少児からテニススクールに通っていたらしいこいつは我がクラブの現在のエースだし、体は大きいがブサイクではないからそれなりにもてるのだろうと思う。それに女子相手でも滅多に照れずに思っていることをいえるらしい性格だから、俺に気になる女子が出来た~なんてこと聞いたらコートの中からでも叫びそうだ。
佐伯さんっているー!?って。うちの教室に向かって。
だから、言わない。
「なあ~ってば、航~」
「うるせー」
「航ってば~。お前海より広い心を持ってるんだろ?いいじゃん悩みの一つや二つ」
なんじゃそりゃ。もう突っ込むのも面倒くさいぜ。
「・・・ただの睡眠不足だから」
うるさくなってそう答えると、幸田はえ?って顔をこっちへ向けた。
「何で?だってお前、全部の授業中寝てるんじゃなかったっけ?」