コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
どうやら俺は、2組の眠りん坊ってあだ名があるらしいのだ。それはこいつから聞いたのだけれど。1学期の終わりにはそんなあだ名が定着してるぞ~って笑われたから覚えている。
その時は、どうでも良かった。
だけど今は、どうかそんなあだ名で佐伯の前で呼ばないでくれ、とも思ってしまう。何だよ眠りん坊って。まるで中坊みたいなあだ名じゃないか。
ラリーの順番待ちで手持ち無沙汰の俺は、クマが出来ているかもしれない目の下をこすってひっくい声で言った。
「寝ちゃダメだろ、授業中は!」
幸田が呆れた声を返した。
「いや、それ今更お前が言う?」
まったく、うるさい。
実際のところ、超眠かった。
昼練が終わって次の5限目は、うちのクラスは物理だったのだ。
緒方先生という40代前半の男性教諭だけど、この先生がまあ酷い。何を言ってもお経にしか聞こえなくて、俺でなくてもクラス中が眠りの渦に引き込まれてしまうのだ。
今もその緒方先生がたらたら~っとさほど抑揚もつけずに教科書を棒読みしている。
・・・・・ね~む~い~・・・。ともすれば頭がガクっと崩れ落ちそうになる。
だけど。ちらりと目の端で隣を盗み見る。
眠れない。だって、隣の席が気になるから。
授業が始まって最初の方は肘に顎をのっけて寝たフリをしていた。だけど、昼練で疲れているはず、しかも昼食でお腹も満たされているはずなのに、ど~うしても眠れなかった。