コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
ただ眠いだけで眠れない。それって、拷問だぜ。
ううう、くそ。もう泣きたい、俺。
片手で顔を覆って指の間からちょっとだけ見る。隣の女の子を。このクソ眠たい授業中、あの子は何をしてるのかな――――――――・・・
サラサラと音が聞こえたから気になっていたのだ。
だから指の間から盗み見た。すると、何やらノートに一生懸命何かを書いているらしかった。
・・・あれは、絵?
思わず振り返ってガン見しそうになってしまったとき、緒方先生の声が飛んできたのに気がついた。
「じゃあここを、えーと、佐伯に答えてもらおうかな」
って。
俺は手を顔から外して彼女を見る。だけど、当の本人は気がついていないようだった。相変わらず下を向いて、一生懸命にシャーペンを動かしている。
あ――――――あれ?授業、もしかして聞いてない・・・?ってか気がついてない、よな?これ、やばいよな?
「佐伯~?おい」
緒方先生の声に苛立ちが混じりだしたのが判った。クラスの中何人かが振り返りだす。
俺は咄嗟に左足を伸ばして彼女の机を軽く蹴飛ばす。45センチ、二人の距離は45センチ。だから俺の足でも届く。実は体育で着替える時に、人の目を盗んでこっそりと測ったことがあるから知っているのだ。彼女の机まで、45センチ――――――――――
コン、と音がして、軽く机が揺れる。
「佐伯!」
彼女が、ハッと顔を上げた。