コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
いや、実際にはもっと長い文章でダラダラと言い訳をたくさん並べていたはずだ。だけど要約すればそういう内容の言葉を言ってしまって、俺がハッとしたときには佐伯は困ったような顔をして謝り出していたのだ。
「―――――――あの・・・ごめんね」
って!!
うおっ!!やばい、違う違う、違うんだああああ~!君が悪いんじゃなくて、そうじゃなくて・・・。
俺はめちゃめちゃ慌てて訂正に走る。手に持っていた教科書を握る力が半端なかった。
「いや、佐伯さんは悪くないんだけどさ」
そうそう、全然君は悪くない。
「というか、きっとその方が俺にもいいんだよな。寝ずに済むんだから」
そうそう、寝ないに越したことはないし、どうしても君が気になって眠れないんだもん。
「だから、うーん、謝る必要はなくて・・・」
べらべらべら。俺は一人で汗を垂らしながら弁解しまくっていた。
隣の席である佐伯が起こしてくれないから、俺眠れないんだよね~。そんな意味に取られたらどうしようと思って、本当に必死で訂正した。
佐伯はちょっとぽかんとした顔で俺を見ていたけど、顔をふんわりと緩ませる。・・・う、笑った。俺の慌てようが面白かったのかな。
まともに喋ろうと思ってもこれだ!
俺は自分の頭を叩きたい気分で席を立つ。丁度移動教室なのだ。今はそれに感謝して、この場から逃げよう。
だけどそこで、また彼女の声が聞こえた。
おずおずと、だけどハッキリとした声が、俺の耳の中へと飛び込んでくる。