コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
「ごめんね引き止めて。でも、あの・・・」
え。俺はパッと振り返る。何何何?まだ何か用があるのでしょうか?
一瞬の躊躇を見せて、それから決心したように佐伯が前髪のしたから俺を見る。
「あの、そんなに眠いなら、夜にもうちょっと早く寝たら?」
カーン、って、たらい桶が落ちてきたみたいな衝撃があった。
・・・・・・・やっぱり、気にしたよな、さっきの俺のセリフ。そう思ったからだった。
授業中に寝るくらいなら、夜しっかり寝ろ。そう思っても不思議じゃねーよな・・・。だから俺は結構凹みながら、その場を離れるついでに返答した。
夜も寝てるよ、って。でも朝錬があってどうしても眠くて。うちの部、試合が近いからハードで~って。もう言い訳のオンパレードだ。
だけどもう無理。チャイムが鳴るし、結構な傷口を作ってしまった・・・。
俺は学校中に響き渡るチャイムに力を借りて、彼女の返答を聞くことなく教室から走り出た。
佐伯。
隣の席の女子。
前はなんとも思ってなかったけど、あの衝突からかなり気になりだしたクラスメイト――――――――――――
問題は。
俺は放課後の放送委員の会合で机に肘をつけて悩んでいた。
・・・下の名前、なんてーんだろう。
「ちょーっと横内君!起きてる?委員会でも寝ないでよ~」
そういう声がして、同時に肩をゆっさゆっさと揺さぶられた。
「へ?」