コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
とにかく俺の顔と経歴が、ここ最近試合で結果を残せてない水泳部の熱血顧問である上田先生にばれてしまったのだった。だけどこうも予想通り「水泳部に入れ!」と連呼されるとは思わなかった。それも、今の所属クラブである硬式テニス部の顧問の前で。
放課後にいきなり呼び出されたのは田崎先生も俺と一緒だったらしい。二人が揃うといきなり上田先生はベラベラと喋りだしたのだ。横内は、テニス部でなく水泳部にいるべき人材だと。
両腕を組んだ田崎先生は一通り上田先生の話を聞いていた。この時は、機嫌が悪い時の無表情で。
それから俺に聞いたのだ。で、横内。お前はどうしたいんだ?って。水泳部へ入りなおすのか、それともこのままテニス部にいるのか、って。
俺はテニスをしますと即答した。
それで上田先生がしばらくごねて―――――――こんな時間だ!
イライラと俺は廊下を歩く。
もうすっかり夕方で、夏休みが終わって実力テストも終わった後、夏の終わり前の、まだ凄いオレンジ色で校舎中を染めてしまうような夕焼けの中だった。
この、山の上にある大きな高校は西日を真っ向から受ける立地なのだ。毎日天気のいい日には学校中の廊下を真っ赤に染める光が隅々まで満ちている。眩しいその光景の中で、俺の影だけが黒くのたのたと廊下を這っていた。
教室に鞄が置きっぱなしなのだ。それを取って部活に行かなきゃ。
そう思って歩いていたんだった。
それが、校舎の真ん中にある階段の踊り場前。
俺はそこでいきなりとてつもない痛みに襲われた。