コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~


 顔を上げるとそこにいる面々の呆れたような顔。・・・・いや、寝てねーんだけど。もう皆、俺が下向いてたら寝てるのだろうって自動的に考えるようになってるよな。

 それは紛れもなく俺自身のせいなんだろうけど、なんか悔しい。

 中学の頃までは間違いなく尊敬や憧れの視線を受けていたはずの俺は、今ではただの「やたらと寝てるヤツ」なんだよな。ちぇ。

「ごめん、聞いてるよ」

 ふう、と息を吐いて委員長の6組の桑原が、ノートを叩いた。

「もういっか。じゃあこれで会議は終わり!来月の放送順番も今月のを繰り返しってことで。それから文化祭のうちからの出し物、各自考えといて~」

 はーい、だらだらとそれぞれから返事が上がって、月に一度の委員会は終わりとなる。

 高校3年間の内1年間は必ず何かの委員をしなければならないので、1年生の時は何もしていなかった俺は春先にじゃんけんで勝ち抜いて、気楽だからという理由で人気の放送委員の座を獲得したのだった。

「クラブ以外は本当寝るんだよね~。横内君て!」

 さっき俺の肩を揺さぶった、隣のクラスの菊池さんがそう言って笑った。

 この人はクラス委員もしてるらしい。だからどうしても世話をやいてしまうのだろうか。それとも単に、忙しいのが趣味なのかな。

 細い茶色の髪の毛は肩まであって、菊池さんが笑うとそれがサラサラと揺れる。大きな口元はいつでも笑みを作っていて、くるくるとした大きな目が可愛い女子だ。化粧でもしているのだろうか、睫が凄く長い。サッカー部に元カレがいるとかで、一度うちのクラスの男子が2年生可愛い女子ランキングなるものを作ったときに上位にいたはずだ。それは覚えている。


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