コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
「え?」
俺はくるりと振り返る。菊池さんは何故かにやりと意味深な笑顔を向けてきた。なんか、観察しているような視線だな、と頭の片隅でちらりと思う。
「佐伯、七海。同じクラスでしょ?2-2だもん、あの子」
「・・・・あ、うん」
知ってる知ってる、勿論知ってる!・・・さえき・ななみ。ななみっていうのか、下の名前。どんな字を書くんだろう。隣が歩き出したから、俺もつられて歩き出す。頭の中が混乱中でちょっと呆然としていた。
「そのね、夕焼けオタクの七海と、実は私同じクラブなんだ~。美術部なんだよ、知ってた?」
知ってた?のところにまた何か含まれたような声色を感じた。
「・・・へえ」
そう無難に答えて、俺はもう彼女の方は見ないで前だけを向いて歩く。廊下の先でじゃあ、と手を振った。菊池さんはまたね~と大きな声で叫んで手を振っている。
「横内くーん、クラブ頑張って~」
階段を駆け下りながら考える。
・・・・佐伯、美術部なのか。