コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
大げさでなく世を儚みたい。うおおおお~・・・やばい、どうすればいいんだ!とりあえず誰かに今すぐノートを借りないと!だけど休み時間でほとんどのクラスメイトが廊下に出てしまってるし、よく話す佐藤や田原は一体どこに―――――――――――
だけどそこで、まさかの天使が降りてきた。
その例えがちょっとくさいのは判ってる!だけどマジで、そう表現したくなるようなタイミングで、隣の席から小さな声が聞こえたのだ。
どうしたの、って。だから俺はノロノロと答えた。ノートを忘れてきたって。それだけでこの落ち込みが判るのは、紛れもなくうちの高校在籍者だ。
すると何と!隣の静かな女子は、更に好感度が上がるような行動に出たのだ!
しばらく俺を見詰めたあと、佐伯は自分の机の上に準備していたノートを差し出した。
「横内、君。これ、えーっと、よかったら」
え、いいの?
頭の中ではそう言った。
現実には彼女を見詰めただけだったけど。
差し出されたノート、それは間違いなく、俺に向けられていた。
時間がない。だから俺は感動もそこそこに、サンキュ、とだけを返して奪い取るように借りる。それから全力で彼女の予習内容を書き写したのだ。
几帳面そうな細い文字。小さくて、でも綺麗な形。
もっと観察したいけど、それに貸してもらったって感動も味わいたいけど、とにかく次の1時間生き残りたかったら、今の内にうつしてしまわないといけない!