コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~


「俺も海に関係ある名前だからさ、ちょっと気になっただけ。俺はじいちゃんが漁師でさ。初孫だってんで、決められたって母親が言ってた。じいちゃん家は瀬戸内で滅多に行けないけど、暖かくて綺麗な海なんだよ。俺は好きなんだけどさ、この名前」

 もう一気に話した。

 名前は航という。航海するの航だ。それを彼女が知っているかは知らないけど、もういいやな勢いで。だけど考えるような顔をして自然に頷いていたから、どうやら佐伯は俺の名前を知っていたらしい。

 じいちゃんの家がある、あの海辺。

 キラキラに光る、太陽が高い位置の時には波が眩しくてしっかり見ていられないくらいに光輝くあの海を。

 小さい頃はよくいっていて、じいちゃんの口癖を船の中に座って聞いていたのだった。

 ―――――――――ほら、航、すげーだろう。海と空が同じ色なのは何でやと思う?空があまりに綺麗だから、海の神様が羨ましく思ってうつしたんじゃ・・・。

 人間は水の中では呼吸は出来ん。だけど、魚みたいに泳げるんや。しっとるか?自分の手と足で水をかいて、自由に行き来出来るんやぞ。

 そう、何度も。行くたびに、何度も。

 魚みたいに、泳げるんだ。なら俺も泳ぎたいかも。それが、水泳を始めたきっかけだ。じいちゃんの海からは遠く離れていたけれど、水の中の青がみたくて。魚みたいに自由に泳ぎたくて。



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