コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
思わず、彼女を真っ直ぐに見てしまった。負けず嫌い?そりゃ、確かに俺はそうだけど、でも―――――――――
つい笑った顔で言ってしまったのは、傷口があるって知られたくなかったからかもしれない。
「負けるのが好きなやつなんているのか?」
自分が情けない思いを、悔しい思いをするのが好きなやつなんて。
その時一瞬、空の青も、佐伯に会えたことで上がっていた気分も忘れてしまっていた。
彼女は口を開けたままで固まっている。
・・・ああ、今、俺、結構きつい言い方だったかも。そう気がついて、苦労したけれど意識して口元を緩める。
「・・・まあ、俺はかなり負けず嫌いだと自分でも思うけどさ」
「――――――」
とにかく、もう戻らなきゃ。
俺は彼女の横を通り過ぎながら言い逃げみたいに言った。じゃあな、って。ぶつかってごめんなーって。
もう振り返らずに、そのまま校舎の影で昼食をとっている部員のところまで歩いて行った。2年生が集まって円を作って弁当を食べている。まだちょっと表情は暗かったけど、やはりそれなりに会話は生まれてきているみたいだった。
あ、横内戻ってきた、そういう声が上がって、俺は片手をあげる。
「航、何してたんだよ、遅かったな~」
こっちこいよ、と声をかける幸田に頷いて、俺は鞄を手に取る。
「袋置く場所判らなかったのか?すぐだっただろ、倉庫の中の左奥」
不思議そうにまだ聞く幸田に、上の空で答える。