コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
実はこの間、席替えがあったのだ。
いつもながらいきなりの担任の提案だった。もうお前らも飽きただろ~、横内以外は席替えするか!って。面倒臭いのと今のポジション(後の方とか、窓側とか)から動きたくないクラスメイトはブーイングをしたけれど、そのほかは大歓迎で受け入れてしまった席替え。
いつもは気にならないその行事も、今回ばかりは俺も参加したかった。
だって、あの子と離れてしまうから。もしかして動けば、また近くになれるかもしれないから。
「先生、たまには俺も動きたいー」
手を挙げて一応そういってみたけど、あっさりと却下されたのだ。
「確かに最近寝てないらしいけど、横内はダメだ。うーん、どうしても移動したいなら一番前の真ん中にくるか?」
クラスメイトが笑う中担任が朗らかにそう言ったので、俺は仕方なくここでいいっすと答えた。
ガタガタと教室中が移動を始める。俺以外は。
一度何か言いたそうな顔で佐伯がこっちを見た、と思う。だけど俺が口を開く前に、彼女は机を動かし始めてしまったのだ。
ああ~・・・行ってしまう。
あれ以来、あの土曜日の体育倉庫での衝突以来、話せてないのに。
隣の席だしまたチャンスはあるって軽く思っていた。
だけど何も話せないまま、もしかしてあの日俺のきつい言葉に傷付いただろうかって聞けないままに、彼女ははるか遠くの前の方、窓際の席へと移動してしまった。