コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~


 そんなこんなで消化不良を起こしたような微妙な毎日だったけど、放課後に、ちょっとしたハプニングが起きたのだ。

「え、休み?」

 廊下で俺はそういって突っ立つ。

「そう。流石に毎日雨すぎて。先生が先に鬱陶しくなったらしい」

 幸田はそういって、まだしつこく降り続く外の雨を指差した。

 なんと顧問からの通達で、今日の部活は休みになったようだった。わお、そんなこともあるんだな~。

 こんなこと滅多にないし、帰りどっか寄らないか?って誘う幸田にあっさりと手を振って、俺は廊下を走り出す。

 だってさっき見たのだ。

 校門を出る、佐伯の姿を。

 今から追いかけたら、間に合うかも――――――――――

 話しかけるチャンスもなくずるずると過ごしていて、ラケットも握れないとなればここらで一つくらい嬉しい楽しいことがあってもいいはずだ!

 俺はぐんぐんとスピードを上げながら、雨の外へと飛び出す。

 あの子はオレンジに青い花が散ったような傘をさしている。普段は静かで目立たないタイプなのに、傘は派手目なんだな~って思ってたから覚えていた。

 もう駅までいっちゃったかな?だとしたらショックだ。

 だけど、校門を出てダッシュで山道を登った先に、そのカラフルな傘を発見した。俺は静かに距離を縮めて、ほどほどに近づいたところでスピードを落とす。この荒い呼吸をなんとかしなければ!クールにいきたいところなのだ、出来るだけ、何てことないって感じに。


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