コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
まだあの子は気がついてないみたいだ。なんだかぼーっとしたような感じで、重くて灰色をした雲が広がる空を傘の中から見上げている。
俺はそっと近づく。すると――――――――――おっきい、すんげーおも~い、ため息が聞こえた。
聞いてしまった俺が思わず感想を口にだして言ってしまうくらいのが。
「・・・すげーため息」
がばっと彼女が振り返った。その勢いに、傘から雨の滴が飛んで舞う。わお、そんなに驚かせたかな、俺がその考えを口の中でかき消している間、佐伯は目を大きく見開いて一歩下がる。
「よ、横内、君・・・」
わたわたしていた。
「よく降るな、雨」
反応が面白かったけど、そこには突っ込まずに普通に返す。すると彼女はちょっとテンションが上がったような感じで体ごと向き直ってくれた。
それから横目で一瞬信号を確認して、これまた大きく目を開いて言う。
「あれ、クラブは?」
・・・まあ、そうくるよな。俺が普段、こんな時間に電車にのってることないんだし、それは知ってるんだろうな。そう思ったから説明した。続く雨で顧問がたまにはって休みにしたこと。
普段はクラブがないなんて何のために学校に来てるんだか判らないって感じになるんだけど、でもここで佐伯に会えたのは嬉しかった。会えた、なんて、走ってきたんだけどさ、俺は。
「あ、そうなんだ」