コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
そういって佐伯が頷く。黒い髪が肩を滑っておちていく。俺はそれを無意識に見ていて、ぼんやりと心の中で考えた。・・・長いよな~・・・。何か不思議だ。ちょっと触りたい、か、も・・・。
―――――――いやいやいや!!
パッと目線をそらすと丁度信号が変わったところだった。慌てて声をかける。
「信号変わったぞ」
それから歩き出す。前だけを見ろ、って自分に言い聞かせていた。
彼女がどうするのかわからなかった。一緒に歩いてくれるのか、別々の行動になるのか。目的地である駅は同じだけど、このままで離れてしまう可能性だって大なのだ。
だけど足音と気配からすると後ろをついてきてくれているようだって判って、ぐぐっと嬉しさがこみ上げてきたのが判った。
・・・うお~、ちょっと待て俺!そんな性格だったっけ?っていうくらいに、テンションがあがりつつある。にやける口元をかみ締めることで耐えた。
ここのところずっと話せてなかった気になるクラスメイト。席替えしてからもどうしても彼女へと向かう視線に、自分でもヤバイだろうって思っていた。だけど一緒に歩きたいがために一生懸命雨の中を走り、それから今のこのテンション。
ずん、と何か重いものが自分の頭の上に落ちてきたかのようだった。
例えば、この頭上にびっしり広がる灰色の雲が全部とか。
つまりそんな感じがしたってだけなんだけど、とにかく何か重いものが。くらっとした気分だ。
つまり。
つまりつまり。それだけ緊張して後ろに集中してるってことで。
・・・・うわあ~・・・こんなに意識するなんてよ。全く。