コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
一人で照れてるのを誤魔化すために、欠伸をした。ああ眠いって言葉まで出して。
佐伯がそれに反応するとは思ってなかったけど、彼女は後ろから話しかけてきた。
「授業中寝てたんじゃないの?まだ眠い?」
声に笑いが含まれているのを感じた。ちぇ、ちょっとからかいモードってやつかな、これ。俺はいたって自然な状態を装って言う。
「・・・最近、俺あんまり授業中に寝てないんだけど・・・」
「え?あ、そうなの?」
俺の言葉に佐伯はちょっと考えるような間をあけて言った。
「隣の人起こしてくれてるから?今は誰だっけ、隣の席」
その応えが残念過ぎて、躓くかと思った。
―――――――――違っげーよ。佐伯が気になるからだよ。
心の中ですぐにそう反応してしまった。だけどまさかそんなこと言えやしない。だから仕方なく、俺はまた誤魔化した。ま、竹崎さんが起こしてくれるだろう事は事実だろうし。なんせ余所見してるだけで毎回声が飛んでくるんだ。
「それもあるけど。・・・なんか、寝れなくて」
君を見てしまうから。そんなこと言えない。だけど事実はそう。今までつっぷして寝ていた俺の授業中は、今では窓際で前の方の席に座る元隣の席の子をどうしても目で追ってしまうから。
佐伯はしばらく黙って歩いていたけれど、駅の改札口が見えてきた頃になっていきなり喋りだした。