コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~


 ・・・へえ、そっちも?口には出さなかったけど、俺はそう思った。

 俺もついてないんだ。席替えはあるし、雨ばっかでクラブは出来ないし。でもこの子よりは確かにマシかもな。だって朝学習参加とか、マジ地獄だもん。

 何か出来ないかな。今からでも、凹んでいるこの子のために、俺は何か・・・。

 その時、鞄の中に入れっぱなしだったあるものが俺の頭の中に浮かんだ。

 丁度駅につく。定期券を出すついでに、俺は鞄のポケットを探った。手を突っ込んだその先に、四角くて硬いあの感触。

 よし発見!これをなんとか、どうにかして渡したい。

 けど普通に渡すとか、そんな恥かしいこと絶対無理。だって断られたらかなりショックだと思うし。出来たら押し付けたい。ならどうする?どうやったら自然だ?

 ええと―――――――――

 深く考える暇がなかった。ポケットの中から取り出した携帯電話をひっつかんで、俺は言う。

「電話だ。じゃあな、佐伯。もうすぐ電車くるぞー」

 あ、うん。彼女が頷いて傘を畳み、改札口を通り抜ける。

 ・・・よし、今だ!

 その人気のない改札口で、俺はタイミングを見計らって声を張り上げた。

「あ、そうだ、佐伯!」

「え?」

「やる!」

「え、え?」


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