コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
全然教室にいれなかった。それはきっと全校生徒がなんだろうけれど、俺は日に日に機嫌が悪くなっていった。
思い通りにいかないことがこれほどストレスとは!
それにもう一つハプニング、というか、事件があったのだ。
それはまたしとしとと雨が降っていた放課後のことだった。
「このくらいならいけるだろ。外周10周、いってこい」
顧問がそういって、俺達男子硬式テニス部は他の陸上部やバスケ部などにまじって学校の外周を走ることになったのだった。
その日。
雨が降っているのに傘もささずに雨に濡れながら、佐伯が駅までの山道を登っていたのだ。
一人で、下を向きながら。
あ、佐伯だ。そう思ってからはもう、彼女しか視界に入らない。俺は遠くの方で信号待ちの彼女を見つけてしまって、それから走って近づくまでの間、ひたすら目で佐伯の表情を伺いみていたのだ。
・・・なんか、暗い雰囲気。あれ?でも今日別に、教室では普通だったけどな――――――・・・
俺はめちゃくちゃ気になってしまって、色んなクラブの人達が入り乱れて走っている外周の列からつい抜け出してしまったのだ。で、彼女に聞いた。傘ないのか?って。
佐伯はまた目を大きく開いて俺をみたけど、そこで驚いたのは俺の方だった。
全身が霧雨にぬれて表面がしっとりしてしまっている制服。それに長い黒髪は細い束になって背中や胸元に落ちている。そして佐伯は・・・泣きそうな顔をしていた。
ぐっと唇をかみ締めて、眉をよせて、困ったような怒ったような顔で俺を見ていた。
困惑して見詰めてしまった。どうしていいか判らなくて。・・・一体、何?そう思って。