コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
「・・・綺麗。凄いたくさんの色」
「うん」
俺の返事は聞こえてないようだった。これが菊池さん曰くの夕焼けオタクか、と納得するような没頭さ。彼女は目を大きくあけて、ひたすら暮れ行く空を眺めている。
おーい、目が乾いちゃうぞー。
おーい、ちなみに俺も隣にいるんだぞー。
テレパシーは全く届いてないようだったから、苦笑してから俺も空の観賞に戻る。
空の上は風が強いらしく、雲が飛んで流れていく。そのスピードに目が奪われた。
やがて太陽がちらちらと最後の光を飛ばして、そのまま地平線に沈んで消えていった。
隣から残念そうな佐伯の声。
「・・・消えちゃったー」
その、本気でガッカリしてますって声に俺はつい笑ってしまう。
きっと俺のことなんか忘れてるんだろう、だけどそれに悲しむよりも、目の前の佐伯のリアルな反応が楽しかったのだ。
笑い声にハッとしたように彼女が振り返る。その顔は、真っ赤だった。
「・・・・な、何?」
ダメだ、面白い。俺はとうとう声に出して大きく笑ってしまった。あはははは!って。
「いやあ、夕焼けファンって本当だったんだな、と思って。すごい陶酔した顔だった。佐伯って午後4時半の女って呼ばれてるって聞いたけど、それって夕焼けに関係あるんだろ?」