コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
俺がそういうやいなや、彼女がいきなり両手で自分の両頬をぶったたいたからビックリした。
は?ええ?
「・・・佐伯、何してんの?」
思わず真顔になって聞いたのに、佐伯からの返事がまた俺の笑いスイッチを押してしまう。
「いやいやいやいやいや!ほら、あのね、ええーっと・・・どうしてそのあだ名をそなたが知っているのでござるかと思って!」
―――――――あ?
「あはははははは!」
なんだその口調は!どうしていきなり時代劇なんだ~!!
もう本当に面白くて俺は腹を抱えて爆笑する。地味で大人しい女の子。たまにする、かなり激しい反応とこの焦った口調。
ああ、面白い。こんなに笑ったの、マジで久しぶりだ。
「ほんと、静かなようで実はおもしれーんだなあ、その慌てたときに言うことがさ。あはははは」
「・・・」
「ござるって!あはははは!」
佐伯は恥かしがっていたみたいだけど、とめることが出来なかった。だってまさかのこんな会話。ござるって何だよ~。
すると少しだけ間をあけて、きっと彼女がこっちを向いた。それから大きな声で言う。
「夕焼けをね、見るのが好きだから!」
「え?」
5時になって、学校中に響き渡る下校チャイム。だけどそれに負けないようにって声を出しているらしかった。