コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
「学校をね、4時半くらいに出たらね、電車の車輌一つを一人じめできて、しかも凄ーい夕日が見られるの。だから大体いつでも4時半には学校を出ちゃうの!それで美術部のメンバーはあたしをそう呼ぶんだけど・・・横内君、誰に聞いたの?」
もう出ないと、って佐伯が促す。ああそうか、屋上にいつまでもいたら見回りの先生に見付かって怒られるよな、そう気がついて、俺も鞄を持って歩きながら言った。
「えーっと、ほら、3組の菊池。委員会が一緒で話すことがあって」
驚いた顔で彼女が振り返る。ドアを開けて、そのままで俺を見ていた。
「え・・・・。よ、横内君って委員会何?」
「ん?放送部。だから当番の時は、昼の放送で菊池に会う」
一体何をそんなに驚いてるんだ?俺はちょっと不思議に思いながらこたえた。菊池って佐伯と友達じゃなかったのか?知らなかったんだな、放送委員って。・・・俺は君と同じクラスなんだけどね。
最後のところでちょっとテンションが下がったけれど、何故かよろめいて階段にひっつかまる佐伯を見て慌てた。
「え、佐伯大丈夫?」
「え?うん、はいはいはい。大丈夫でござる」
やけくそのようにそう言いながら、佐伯は何かを忙しく考えているようだった。出た、ござる言葉。あはははは!俺がまた笑いながら階段を降りていると、後から佐伯の声が降ってきた。
「あのー・・・優実は・・・ええと菊池さんは他にも何か言ってた?」
「ん?」
「いや、だから、あたしのそのあだ名以外に、ってことで・・・」