コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
「電車でも綺麗だと思うけど、もっといい場所もあるじゃないか。それも初めから人がいないって保障つきでさ」
何も人のいない時間を、公共の電車内で狙わなくても。もっと簡単な場所が。
だけど佐伯はぽかんとしているようだった。よく判ってないようだ。俺は言葉が足りなかったと継ぎ足す。
「夕焼けだよ。綺麗な夕焼けを見るんだったら――――――――ウチの学校の屋上が、ベストだと思う」
あ、という形に佐伯の口があいた。
俺はまた笑いそうになって、でもそれを我慢して靴を履きかえる。
「ついさっきだって、あんなすげー夕暮れみたじゃないか。・・・じゃーなー、佐伯、逃亡につき合わせてごめんなー」
最後はほぼ言い逃げの勢いだったけど、とにかく上機嫌だった俺は手を大きく振ってみせた。
それからもうかなり暗くなってきている中、急いで部活に顔を出すべく鞄をもって走り出す。
楽しかった、今日の放課後は。
そう思いながら。