コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~


 ちょっと悔しかったらしい。

 そんな自分に困惑したけど、授業が始まる前にちらっと後ろを振り返った佐伯と目が会った。

 彼女は驚いた顔でパッと視線をそらしてしまったけど、あれ、まずかったかなあ~・・・。そう考えると凹んでしまうのだ。

 俺はもしかしたら、怖い顔をしてたかも、って。ちょっと睨むようだったかも。

 佐伯が髪を切ってから、クラスの中でも男子の間で「案外可愛かったんだなー」という声を聞くようになった。

 だから、最近は毎日がちょっと憂鬱なのだ。

 隣の席じゃないし、委員会もクラブも同じじゃない。問題の面倒臭かった文化祭も終わってしまって(合唱はちゃんと歌いました)それこそ話す接点がない彼女が、どんどん離れてしまうような気がして。

 ・・・イライラする。このままじゃ、ダメだ。そう思っていた。


 全然話せない。しかも、相手は何故か可愛くなってしまった。俺はそれに勝手に焦りを感じていて、部活でも不機嫌だったのだ―――――――――あることに気がつくまでは。

 それは、たまたまだった。

 いつものようにボールを高く空へと上げて、青空と黄色のコントラストを楽しんでいた。その光景にひかれてテニスを始めたわけで、もうこれはクセになってるといってもいい行動だったのだ。

 ポーンとラケットの面で打ち上げる。

 青くて高い空へとボールが上がっていく。

 灰色の大きな校舎をバックにしてボールが上がり―――――――――屋上のフェンスのところに、人影を発見したのだ。


< 88 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop