コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~
そして今度、対校試合があるのだった。
本当は夏の大会で3回戦で破れて引退した、3年の先輩たちも参加する、毎年行われる隣町の高校との試合。
勝ったり負けたりで同じくらいのレベルと言えるその対校試合は、どうしても勝ちたい。そう叫ぶ先輩たちのためにも、俺達だって頑張ってきているのだ。
朝錬に昼練に夕練。たまには夜にまで練習が食い込むことがある。夏場だから日が沈むのが遅く、夏休みの間から今年はテニス一色だったのだ。
・・・・だから、眠いんだよな、きっと。そうに違いない。ってかそうだと言って欲しい。
とにかく眠いのだ。教室に入った瞬間から、その空間は優しく温かく思えるほどで、あんなに硬くて冷たい机なのにすんなりと眠りの世界へと連れて行ってくれる。
いやいやいや、ダメなことなんだ、それは判ってる。
思わず電車の窓ガラスに頭をゴンゴンと打ち付けたくなった。
俺だって眠りたいわけじゃない。お陰で2年に上がってすぐから先生方には常に睨まれているし、普通は高校生にはない宿題を大量に出されるはめになったのだから。だけどどうしても眠いんだ~!
そこで、隣の席に座る人には迷惑をかけていることになる。なんせ俺が寝るからついでに目立つので、俺の隣の席の子は授業中に当てられる危険性にさらされる。自分だって真面目にしておかなきゃ俺を叱るついでに叱られる。
いつでも「隣の席の子」達は俺を起こしてくれる。それに甘えちゃダメだ、と自分では思っていた頃、1学期に一度だけ、佐伯さんが隣になったのだった。
実は、佐伯さんには一度も起こしてもらったことがない。
彼女はまるで俺など最初からいませんでした、って感じであっさりと無視をした。彼女が隣の間、先生方が俺をしばく回数は格段に増えた。勿論彼女が悪いんじゃないけど、でも!
やっぱり印象は良くなかったのだ。