生徒会のスガオ
旧校舎の誰もいない教室に入ると、そのまま壁に押し付けられた。猫を持っていない右手で私の左手と一緒に押さえられた。


「……あはは」

「……なんで笑ってる」

「特撮の悪の大将がヒロインを拉致したような構図だから」


月居くんのマスクのせいだよ。
その言葉に納得したように頷いた月居くんは小さく笑った。


「……確かに」

「それより、なんで私を?」

「どうして……演技をする」

「え?」

「……昔みたいに、自分らしくいれば良い」

「なにを……言ってるの」


顔が近いと否定をするよりも、まるで昔の私を知ってるような言い振りの月居くんに驚く。
私たちが初めて会ったのは中庭だと思うのだけど……。


「にゃあ!」

「あ、コロ助!」

「は?」


猫が嫌がるように月居くんの手から降りると、廊下を出ていった。コロ助という名前に驚き月居くんを見上げた。


「最初はコロだったんだけど」

「……そうなんだ。って、いつまでこうしてるの」


ちょっと恥ずかしい。月居くんほどじゃないけど、凄く緊張してしまうから。顔が未だに近いし、もう頭がパンクしそうだ。
月居くんは、あっ、と気付くとすぐに離れてくれた。


「コロ助」

「ちょっと!」


猫のことが聞きたいため廊下に出た月居くんの後を追いかけた。お世辞にも可愛いとは言えない、ちょっとブサイクな見た目も愛くるしい。

廊下の最奥にコロ助がいて、月居くんはしゃがみながら手招いていた。
どうして、この見た目に怯えないのだろう。ある意味、肝がすわってるのかも。
< 11 / 30 >

この作品をシェア

pagetop