それでも 求めてる
第1章 日常
前川 夢乃 -まえかわ ゆめの-
それが あたしの名前。
高校2年生。
部活は バドミントンやってて
それなりに充実してる高校生活だと思う。
彼氏だっているし、友達もいる。
そんなあたしは、今デート中。
「りゅう~?どれがいい?」
『あー、コーラで!』
武田 龍 -たけだ りゅう-
1個上で、もう引退したけど部活の先輩。
高校1年生のとき、
仲良くなって告白されて付き合った。
「はい!」
『さんきゅー』
久しぶりのデート。
映画に来て、楽しんでた。
―――
「楽しかったねー!」
『だなー。久しぶりに泣いたわ(笑)』
「えー!?泣いてたのー?(笑)」
『うっせ(笑)』
笑いながら照れる彼。
好き――なんだと思う。
ふと、彼の顔が近づいてきて
あ、キス
そう思って目をつぶる。
触れるだけのキス。
――なんでだろ。
あたしは りゅうとのキスが
そんなに好きじゃない…
好き――なはず、なのに。
「送ってくれてありがと!今日は楽しかったね」
『あぁ。またな』
そう言って彼が手を振ってから歩き出した。
あたしは彼の背中を見つめて
好きだよ と彼にも自分にも
言い聞かせた――。
あたしは 1度、りゅうのこと振ってるの。
告白されて付き合って、
でも好きになれなかった。
だけどね、いざ離れたら寂しかった。
だからまた付き合った。
わかってる。
ほんと、自分勝手。
ごめんね、龍――。
こんな 彼女で。