にせパパ、はじめました。
ガチャ



キィ…………


「……ただいまー」


「うわぁ~……ここがパパのお家かー…!」

ドアを開けた瞬間、女の子は目を輝かせながら部屋を見渡していた。


…………玄関には、期待に沿うような物は置いてないはずだが……


「は、入っていい!?」

「ああ。ただし暴れるなよーっ!って……ったく」

俺の言葉が終わる前にダダダとリビングへ走っていってしまった。


「……まぁいっか」


元気がないよりは元気満々の方がいいしな。




「よいしょっと」


俺もゆっくりと足をリビングへ進めた。













「ね~パパ……お腹空いた~………」


ソファーのクッションを抱きながら、お腹空いたと駄々をこねてくる。

…………何か食べ物やるか。


「何が食べたいんだ?さすがに俺の弁当はダメだしな……」

「?べんとー……?」


俺は鞄の中から弁当を取り出した。

今朝作ったばかりなので、まだほのかに温かい。


「これは弁当っていって、この小さい箱に食べ物を詰めるんだ」


蓋を開けると、ふわっと唐揚げの香ばしい匂いが広がる。

女の子は鼻をヒクヒクさせながら「いい匂い!」と言った。


「……ま、これは俺が食べるから、きみ………………」








そういえば……




「…………名前、どうしよっか……」






















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