にせパパ、はじめました。
キーンコーンカーンコーン……


ついに来た、この時間。




「っしゃー弁当だぁ!!」


俺はこの時間が一番好きだ。

なにより楽だし、授業じゃないし…………

まあそんなことを一言でもいえば、成績表には絶望的な数字が刻まれるのだが。



そして、今日はさらに楽しみな理由がある。




パカッ



「おぉ…………!すげぇ……!」


朝、あの小さな手から受け取った弁当箱。

冬が俺のために作ってくれた、世界に一つだけの弁当だ。

彩りは非常に繊細で、ホントにあんな幼い子が作ったとは思えない出来ばえだった。


「……なっちゃんー、食堂行こ……って、あれれ?なんともまあ可愛らしい……」

「あ、悪い。今日は教室で食うわ。翔は食堂行けよ」

そう言うと、翔はニヤニヤと変質者のような顔をしながら


「…………これか??」


……小指を立てた。

顔が赤くなる。

「ち、ちげーよ!全く違う!!」

「えー、でもさぁ~……まさかなっちゃんが急にそんな趣味にするとは思えないし……不器用だし……」

「不器用は余計だ!ほ、ほらっ…早く行けって!!」


グイグイと背中を押す。

翔はププッと軽く吹きながら「んじゃ!邪魔者は消えるねん~♪w」と言って教室を出ていった。


…………はぁ、こりゃ帰りは大変だな……




そう思いつつも、弁当に目をやる。


きちんとお揃いの箸も入っており、手に取ってパクッと弁当を一口食べた。




「…………うまい」


























一時間……二時間と時間は刻々と過ぎていき、今はもう3時前だ。


授業中は何故か時間が経つのが遅く感じる。

……何故だろうか。


「なっちゃん!帰ろーぜっ」

しょうもない思考を振り払い、声が聞こえた方を振り向いた。


俺達は部活動には入っていない。勉強に集中するため…………

なぁんて表では良く言うが、ただ遊びたいからだけなのだ。

「おー!今行くっ」



鞄を持ち、弁当箱を手に持って、教室を出た。











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