にせパパ、はじめました。
走るのをやめ、歩行に変える。



軽く息が切れてるため、白い吐息が口から漏れた。


「…………冬………」


今、家では冬が俺を待っている。

早く帰らないとな…………




独り暮らしだから、家へ早く帰るのは自分の勝手に出来た。

当然、おかえりと帰りを迎えてくれる人もいなかったわけで。

……最近は家に帰りたくないと思う日も増え、友達と夜遅くまで時間を潰したりした。



「……自分で思ってて傷付くな……汗」


ボソッと呟く。

呟いた言葉は白い吐息と一緒に消え、空気に溶け込んだ。


…………身体が冷える。

ブルルと身震いが起き、また少しだけ軽く走った。













家が見え始める頃にはすでに4時を過ぎていた。


「…………」




『おかえりなさいっパパ!』


…………とか、言ってもらえるのだろうか。



お……おかえりって言ってもらいたいのは当たり前だろ!

別に変じゃない!…………多分。



でもまあ、無言はさすがにないだろう……

そう思いながらドアを開ける。


なんで家に入るだけでこんな緊張してんだよ……



キィィ……


「…………た、ただいま」


俺がそう言った途端。




ダダダダダダダダ


「パパーーーーっ!!」ドォンッ


「ぐはっ!!!?」


…………俺の腹に、隕石がぶつかってきた。






















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