にせパパ、はじめました。
感情がない、まるで死んだような暗い声。
真後ろから聞こえたその声に、一瞬恐怖を感じた。
「なっ………」
おかしい。
さっきまで誰もいなかったはずなのに。
扉がないこの部屋で、しかもわずか数秒のうちに後ろに立つなんて……
「…………ねぇ……」
長い黒髪に、白いワンピース。
俺はゴクリとつばを呑んだ。
「………私が……………分かる…?」
ここは、夢の中なのか………?
夢って、こんなにハッキリしてたっけ。
早く起きないと。
「…………やっぱり…………あなたは……」
早く……早く…!
その時だった。
「…………未来を…
忘れないで」
フッ
「……………え………」
そう言って、長い黒髪の人は消えた。
まるで最初からいなかったかのように、部屋中が静けさに襲われた。
…………何でだ。
見たことはないはずなのに。
俺は
あの人を、知っている。