7時45分発、県庁行き
バス停にバスが停まり私を含め数人の人が乗り込むと、私はバスの中を見渡した。
見渡すのは席を探す為ではなくて、
「……っ」
あなたを見つける為。
良かった、今日もいた。
運転席に近いその場所に、あなたは今日も疎らに空いている席に座らず、片手でつり革を持って立っていた。
――ドクンドクン。
今日一番の鼓動を感じて、私はあなたに一番近い席に腰を下ろす。
今日もとてもカッコいい。
ブレザーの胸部分には大きな刺繍。
それは優秀な人が通う高校のシンボルマークで、私の高校のマークはそれではない。
だからあなたに会えるのはバスの中でしか会えない。
名前はなんて言うのか。
それすらも知らないあなたに私は恋をしている。