【完結】遺族の強い希望により
「隠ぺいか。杉下右京が黙ってないぞ」

佐伯みのりはTVに向かって独りごち、こたつの上の煎餅に手を伸ばした。


入学から半年も経たぬ内に大学を辞めた。
引きこもりがちのまま夏が終わり秋も過ぎ、19歳の誕生日は気付かぬうちに通り越して冬を迎えていた。


一歩も外へ出ないどころか、家族とすら口を聞かない日も少なくない。

特に何をするでもなくこたつに潜ってぼんやりとTVを眺めるばかりの生活に、両親は諦めたのか見放したのか、もう何も言わなくなっていた。


やけに特番が多いと思っていたが、クリスマスイブなのだとは先ほど気付いたばかりだ。

カレンダーからも時計からも、社会からも切り離された生活を送るみのりには関係のないことだ。
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