【完結】遺族の強い希望により
「けど、もしも――」

その先の言葉を、男は飲み込んだ。


そうじゃない。
直接繋がりたい、それだけが希望ではない。
避妊をする理由が、妊娠を避ける理由が彼らにはなかった。


或いは賭けだった。
もしこのたった一度で彼女が妊娠するようなことがあったら、それこそ2人が運命の相手である証明のような気すらしていた。


今は抗えない、遠く離れ離れにならねばならない国籍の壁も、引き留めること、追いかけることも出来ない未熟な無力さも、もしこのたった一度の繋がりで新たな命を迎えることが出来たならば全て越えて行けるのではないか。
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