【完結】遺族の強い希望により
「ほら、留学とか? そんな制度があなたの学校にはあるのかなーと……」

首を傾げていた隆司に、妻はそう言って微笑んだ。

彼が勤める学校にはそういう制度はなかったが、留学という言葉には辛うじて反応できた。

「いや、友人だ。高校の時のことだけど、それこそこっちへ留学してきてた」

そうなんだ、と、妻の顔がぱあっと明るくなったのを見て隆司はたじろいだ。
何を喜ぶのか、理解が出来ない。

そんな隆司の様子には気付く気配もなく、妻は続けた。

「ずっと連絡取り合ってたの? 素敵ね!」

「あ……いや、実は20年ぶりくらいの手紙で驚いていた」
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