【完結】遺族の強い希望により
嘘は言っていない。
だが心臓がばくばくと鳴り、冷や汗が背中を伝った。
今ここで、全てを話してしまうべきなのだろうか。

――いや、一体何を迷う?

言うべきだ。
切り出しづらかった話題を向こうから振ってきてくれた、今がチャンスだ。


気を改めるように、彼は一度味噌汁を啜った。

こんな時でさえも旨いと感じられる妻の料理が、今ばかりは恨めしい。
話し始める前に気持ちを切り替えるつもりの一口が、逆に彼を思いとどまらせた。


「尚更素敵じゃない! 20年も経っても覚えていてくれたなんて。先方はなんて? もしかして、久しぶりにあなたに会いたがってるんじゃない?」

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