【完結】遺族の強い希望により
隠し事のない夫婦だった。

愛し合い、尊敬しあい、信頼し合っているからこそ、彼らは楽しい事だけでなく、悩みも互いの愚痴さえも包み隠さずに話し合い分け合ってきた。

つい、今の今までは。


「――実は、真夏のクリスマスを一度見に来ないかと誘われている」

「え? 真夏?」

「ああ、オーストラリアだからな。12月は夏なんだ」


自分は今、嘘を言っただろうか。
手紙にはなんと書いてあっただろう。
クリスマスに来てほしがっているジェシカの思いは痛いほどに伝わってきたが、そのように書いてあっただろうか。

何も分からなくなっていた。
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