【完結】遺族の強い希望により
妻は自分のことのようにはしゃぎ、行ってきなさいよとしきりに勧めている。

「いいなあ、私もいつかは見てみたいわ、真夏のクリスマス!」

想像を膨らませているのか、妻はその言葉を最後に、にこにこしたまま食事を再開し何も喋らなくなった。


『私もいつかは』という彼女の言葉が、少なくとも隆司がジェシカとの再会と娘との対面を果たそうとしている今度のクリスマスには、妻が一緒に渡航するつもりではいないことを示していた。

嘘を吐くつもりも隠し事をするつもりもなかった隆司がほんの一瞬躊躇った間に、妻に何の疑問も抱かせることなくオーストラリア行きが決まってしまった。
妻が楽しそうにしている。

余計に真実を切り出すのが難しくなっていった。
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