【完結】遺族の強い希望により
「な……くは、ないけど。亮こそ久しぶりにこっちに帰ってきてるんだから、お家の人、待ってるんじゃない?」

返した言葉は、ひどく曖昧なものだった。


本音を言えば、もう少し2人でいたい。
けれど、これ以上一緒にいたところでその先に何があるのだろうか。
自分と彼とは既に終わっている。
玲奈のことがなければ、こうして再会することだってなかっただろう。

共にいる時間が長くなればなるだけ、欲が出る。
期待をする。
けれど未だにあの頃の気持ちを引きずっているのは、自分だけなのだ。
後になって惨めな思いをするのは、傷を抉り返すことになるだけなのは分かりきっている。

『一緒に玲奈の家に行く』という再会の目的を果たした今、それならばこのまま、余計な時間など過ごさずに別れるほうが賢明だ。
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