【完結】遺族の強い希望により
そう頭では分かっていても、みのりは自分の口からはっきりと「もう帰ろう」とは言い出せなかった。
既に彼女は、この後の都合を尋ねて来た亮に、抱いてはいけない期待を抱いてしまっていた。

あの頃に戻れるならと、この数ヶ月、どれだけ考えてきただろう。
もしかしたら、彼はこの後、「やり直そう」と言ってくれるつもりなのではないか。


――まさか。久しぶりに会った友達と、ちょっと昔話でも懐かしみたいだけよ。


希望の光など、妄想に過ぎない。
家に引きこもるようになってから、何度そんな夢を見ただろう。
現実になったことなど、一度もなかった。


――もしくは玲奈のことで、お互いの見解でも交換したいとか。


結局、彼が気にかけているのは玲奈だ。
そう考えるのは辛かったが、その方が納得出来てしまう自分が悲しかった。
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