【完結】遺族の強い希望により
「俺はヘーキ、全然」

と亮は笑って、そのままみのりの手を引いた。

どくんと心臓が脈打った。
本当にあの頃に戻ったようだ。
暗に断ったとも捉えられるみのりの気持ちを確かめることもなく、ぐいぐいと引っ張っていく。

そういう少し強引なところが亮にはあった。
そしてそんなところも、みのりは好きだった。


――手なんか繋がないでよ。

そう、口にすることは出来なかった。


錯覚してしまう、時が戻ったのだと。
あの別れの言葉も、離れて過ごした数ヶ月も、全部悪い夢だったのだと。


「飯は? 家で?」

みのりの手を引いたままそう聞いて来たのは、亮自身もどこを目指すつもりなのか決めあぐねているからかもしれない。
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