【完結】遺族の強い希望により
鈴の音に気付いた母がやってきて隣に座る。
玲奈がしたのと同じように線香をあげて鈴を鳴らし、手を合わせた。

母が随分長くそのまま動こうとしないのを見て、玲奈がろうそくの火を消した。
いつまでも祈っている母は、今父に何を語りかけているのだろう。


みのりと亮が帰ってから、母とはまだ何も話を出来ていない。
食事の用意を手伝いながら、最後の手紙だけはまだ開けていないということを報告したのみだった。


「先に、食事にしましょうか」

漸く顔を上げた母がそう言った。
『先に』。
つまり夕食が終わったら、話をするという意味だった。
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