【完結】遺族の強い希望により
「玲奈……食欲ない?」

声をかけられ、はっとして顔を上げて見れば、母の箸もほとんど進んでいない。

「お母さんこそ。病み上がりなんだから、体力付けないと」

「ちょっと疲れが出ただけよ。大分ゆっくりさせてもらったし、本当にもう大丈夫だから」

食卓の会話はそれ以上膨らまず、沈黙に小さな咀嚼音と食器の音が混じるのみだった。


茶碗に最後のひと口を残したまま手が止まる。
ついに耐え切れなくなった玲奈は、母に尋ねた。

「信じてて、大丈夫なんだよね……?」


母は返事をしなかった。
見たことのない複雑な表情は、感情を読み取ることも出来なかった。
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