【完結】遺族の強い希望により
「結局、下手に隠したからおかしなことになったんだよな」

注文を終え料理が来るのを待つ間に、亮はそんなことを言い出した。


他の客の話し声、カトラリーが皿に当たる音、店員を呼ぶベルとそれに応えるウェイトレスの声。
夕食時のレストランは込み合っていて雑音が多かった。


「人命救助のために海に入って溺死、で良かったじゃないか」


2人用の小さなテーブルだ。
対面に座っている亮の声は、周りの雑音に消されることなくちゃんと届いている。
だがすんなりと同意は出来ずに、みのりは氷水のグラスに付いた水滴を指でなぞった。


「溺死は想像でしょ?」

「人を助けて海で死んだんなら、それ以外に何があるんだよ」

「分からないけど……」
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