【完結】遺族の強い希望により
「それ、最早コーヒーの色じゃないけどな」

と、亮が可笑しそうに笑うので、みのりは恥ずかしくなって俯いた。

「お前、そういう大事なこと全然言わねえんだもん」

「べ、別にそんなに大事なことじゃないでしょ。ミルク1個でも飲めるし。は……恥ずかしいじゃない。亮だってそうやって笑うクセに」


目を合わせないようにしたまま、残っていたパスタを今度は時間をかけてよく噛んで平らげた。
途中で一口入れたコーヒーが作用したのか分からないが、先ほどは味のないゴムのように感じたパスタには味が戻っていた。


「――大事なことだろ」


亮が再び口を開いたのは、みのりがフォークを置き、空いた皿を横に避けるのを待っていたかのようなタイミングだった。

「言えば良かったのに。そうやって何でも我慢して、無理してたのか」


そんなつもりはない。
だが付き合っている間、至る所で小さな背伸びをしていたのは事実だ。
すぐには返す言葉が見つからなかった。
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