【完結】遺族の強い希望により
「話してくれる気はないのか」

「……だから、なんのことだか」

誤魔化しきれない、話を逸らしきれない。
嫌な汗がじわりと湧いた。
震えだしそうな手を、テーブルの下で握りしめた。

短い間の後で亮は苛立ったような長いため息を吐き出し、空になっていたグラスを持つと黙って席を立った。
そして2杯目のコーヒーを淹れて戻ってきた彼は、座るなりこう言った。


「ネットの中傷って怖いよな。根拠のない憶測に混じって、小さな真実が隠れてる辺りが特に」


亮は具体的なことを何も言わなかった。
話を玲奈の件に戻したようにも取れる。
けれどみのりは確信した。

彼は全て知っている、或いは疑いを持っている。
そしてみのりから話をするのを待っているのだと。
< 206 / 450 >

この作品をシェア

pagetop