【完結】遺族の強い希望により
大きな音が響いて、脳が揺さぶられた。
くらりと眩暈がして、遅れて頬にじわりとした熱と痛みが走った。

平手を張られたのだとみのりが気が付いたのは、周りのテーブル客の視線とざわめきに気が付いた後である。


「あ……悪い」

亮からそう謝罪の言葉が出るまでには、更に少し間があった。
彼は自分の行動をすぐには信じられないかのように、しばらくみのりを叩いた手を見つめていた。


だがその一発のおかげで、みのりも多少は正気に戻っていた。
冷静に考えれば、亮に対して随分と失礼なことを言ったのだと分かる。
彼がそんなことを考えるような人間ではないことは、良く知っているはずなのに。


「私こそごめん。心配してくれてるのに、酷いこと言ったね」
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