【完結】遺族の強い希望により
気まずさを紛らわせるように、ストローでコーヒーに浮かぶ氷を突いた。
溶けた氷の周りの液体は小さなマーブル模様になっている。
どろりと不吉な渦を描くそれをかき消すようにして、みのりはぐるぐるとコーヒーをまぜた。


「なんで……そんな風になる前に、相談してこなかったんだよ」

悔しげに顔を歪める亮を、不思議な気分で見つめていた。

彼に相談して、一体どうなったと言うのだろう。
何故亮がそんな苦しそうな顔をするのだろう。


「だって亮に言って、何が変わるの?」

全ての悪いことの連鎖の始まりは、亮との別れだったと言うのに。

「終わってたじゃん私たち。亮が終わらせたんじゃん」

「みのり――、」

何か言いかけた亮を、みのりは遮った。


「ごめん、別に責めてるわけじゃない。けどあの時、亮に相談する理由なんかなかった。だからそんな風に、辛そうにされても困るの」
< 212 / 450 >

この作品をシェア

pagetop