【完結】遺族の強い希望により
亮のために言ったつもりだった。
みのりが亮と別れた後にどんな目にあっていて今どんな暮らしをしていようとも、彼に責任のあることではない。

みのりは自分の決断で動いた。
そしてもう、過ぎてしまったものを取り戻すことなど出来ない。
抜け出せずにいる、けれどやり直すことなど許されない、過去の話だ。


テーブルに両肘をつき交互に組み合わせた指の上に額を付けて俯いた亮に、気が晴れた様子はなかった。
彼はしばらくそうして考え込んだ後に、ゆっくりと顔を上げた。
辛そうな表情が、余計に色濃くなった気がする。


「みのりに何があったのか、正しくは知らない。けど、俺と無関係の話じゃない――、俺はそう思ってる」
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