【完結】遺族の強い希望により
こんなことになってすまなかった、と成瀬が頭を下げに来た時には、これ以上下手な噂がたたないように配慮してくれたのか、もう1人先輩が一緒にいた。
みのりに噂の出所を教えてくれた先輩だった。

個人的に口を聞かなくなって久しいのにわざわざ謝りに来た成瀬も、居心地悪そうにしながらそれでも同席してくれた先輩も、悪い人間ではなかった。


もっと言えばみのりは、成瀬のことを想うあまりに嫌がらせをしてきたあの上級生のことも、彼女に加担したその周りの友人たちのことも、全く恨む気がなかった。

恋をして嫉妬をする、その気持ちを知らないわけではない。
理解が出来てしまった。
仲の良い子の敵ならば一緒になって攻撃したくなる女同士の友情のあり方も、気持ちの良いものではないが、全く分からなくはなかった。


もうどうでも良い、成瀬のせいではないからいつまでも気にしなくて良いとみのりは答えた。
自棄になっていたわけではなかった。
他人の噂など本当にどうでも良いと思えるくらい、もっと大きなことが、みのりの中で起こっていたからだ。
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