【完結】遺族の強い希望により
「ジェシカの日記は全部読んだ?」

オーストラリアへ父を迎えに行った日の話を唐突に中断し、母は玲奈にそう尋ねてきた。

ジェシカの日記と言えば、留学が終わって帰国した後から綴られたものだ。
もう20年も前に遡る話で、それが今聞かされていたジェシカの謝罪と直接繋がるのかは、玲奈にとっては疑問だった。


「それ、実は私は読んでないの。亮が読んでくれて、要所を掻い摘んで教えてもらっただけ。それも、子どもを産んだ辺りまで」

玲奈の答えを聞くと、母はそう、と呟き俯いた。

「全部玲奈が自分の目で見ていたら、気が付いたかも知れないわ」

続いた声は、独り言かと思うくらいに小さかった。
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